外国に住む相続人がいる場合の相続手続|必要書類や注意点を行政書士がわかりやすく解説

外国に住む相続人がいる場合の相続手続

はじめに

近年、日本人が海外で生活するケースや、外国籍の方が日本に財産を所有したまま海外へ転居するケースが増えています。そのため、相続人の一人または複数が海外に居住している相続も珍しくありません。

「海外に住んでいると相続できないのではないか」

「日本へ帰国しなければ相続手続はできないのだろうか」

このようなご相談を受けることがありますが、海外に住んでいても相続人としての権利は変わりません。

もっとも、日本国内だけで行う相続とは異なり、必要書類や本人確認の方法、署名の証明方法などに違いがあります。

この記事では、海外在住の相続人がいる場合の相続手続について、実務上のポイントを交えながら解説します。


海外に住んでいても相続権は変わりません

相続人が海外に住んでいるからといって、相続権が失われることはありません。

例えば、

  • 長男は日本
  • 長女はアメリカ
  • 次男はオーストラリア

という場合でも、法定相続人であれば全員が相続人になります。

海外に住んでいることだけを理由に、遺産分割協議から除外したり、一人だけ相続させたりすることはできません。

そのため、海外在住の相続人も含めて手続きを進める必要があります。

海外在住の相続人がいる場合の手続の流れ

通常の相続と基本的な流れは同じですが、一部の手続が追加されます。

① 相続人を確定する

最初に行うのは相続人の調査です。

被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集し、誰が相続人になるのかを確定します。

海外に住んでいる相続人であっても、日本の戸籍によって相続人であることを確認します。

② 財産を調査する

続いて、相続財産を調査します。

例えば、

  • 預貯金
  • 不動産
  • 株式
  • 投資信託
  • 自動車
  • 借入金

などを確認します。

海外在住だからといって、財産調査の方法が変わるわけではありません。

③ 遺産分割協議を行う

相続人全員で遺産分割協議を行います。

現在では、

  • 電子メール
  • オンライン会議
  • 国際電話

などを利用して協議を進めることも一般的になっています。

ただし、最終的には相続人全員の意思が一致していることを書面で確認する必要があります。

海外在住の相続人は印鑑証明書を取得できない

日本に住民登録がない方は、日本の印鑑登録制度を利用できません。

そのため、日本国内で一般的に提出する「印鑑証明書」を取得することができません。

この点が、日本国内だけで行う相続との最も大きな違いです。

署名証明(サイン証明)が重要になります

印鑑証明書の代わりとして利用されることが多いのが「署名証明(サイン証明)」です。

署名証明とは、海外にある日本大使館や総領事館などの在外公館で、「本人が署名したこと」を証明する制度です。

この証明書は、日本国内の相続手続において印鑑証明書の代替書類として取り扱われることがあります。

ただし、提出先(金融機関、法務局など)によって必要書類や取扱いが異なる場合があるため、事前の確認が重要です。

居住証明書が必要となる場合もあります

海外に住んでいる相続人については、住所を証明する書類の提出を求められることがあります。

例えば、

  • 在外公館が発行する住所証明
  • 現地行政機関が発行する住所証明書

などです。

どの書類が必要になるかは、提出先によって異なります。

そのため、相続手続を開始する前に必要書類を確認しておくことで、手続を円滑に進めることができます。

遺産分割協議書を海外へ送付する際の注意点

遺産分割協議書は、相続人全員が内容を確認し、署名(または記名押印)する必要があります。

海外在住の相続人がいる場合には、日本から国際郵便や国際宅配便などを利用して遺産分割協議書を送付し、署名証明等の取得後に返送してもらうことが一般的です。

海外との郵送には日数を要するほか、国や地域によっては配送事情の影響を受けることもあります。

また、一度返送された後に内容の修正が必要となると、再び海外とのやり取りが必要となり、手続全体が大幅に遅れることがあります。

そのため、遺産分割協議書を送付する前には、記載内容に誤りがないか十分に確認しておくことが重要です。

外国語の書類や翻訳が必要になる場合があります

海外で発行された公的書類を相続手続で提出する場合には、日本語の翻訳文を求められることがあります。

例えば、

  • 出生証明書
  • 婚姻証明書
  • 死亡証明書
  • 住所証明書

などが該当します。

提出先によって必要となる書類は異なりますが、日本語訳の添付を求められる場合には、原文の内容を正確に翻訳することが重要です。

翻訳者について法律上の資格は定められていませんが、提出先によっては翻訳者の氏名や住所などの記載を求められる場合があります。

海外在住の相続人がいる場合によくある質問

海外に住んでいても日本へ帰国する必要がありますか?

多くの場合、日本へ帰国しなくても相続手続を進めることが可能です。

もっとも、署名証明や住所証明などを取得するために、日本の在外公館へ出向く必要が生じることがあります。

外国籍の方でも相続人になれますか?

外国籍であることだけを理由に相続権が制限されることはありません。

被相続人との身分関係などにより相続人であることが認められれば、日本国内の相続手続に参加することができます。

ただし、必要書類は日本人とは異なる場合があります。

相続手続には通常より時間がかかりますか?

海外との郵送や必要書類の取得に時間を要するため、日本国内だけで行う相続よりも長くなる傾向があります。

相続税の申告期限や各種名義変更の期限も考慮し、できるだけ早めに準備を始めることをおすすめします。

行政書士からのアドバイス

海外在住の相続人がいる相続では、日本国内だけで行う相続とは異なり、必要書類や本人確認の方法に違いがあります。

また、金融機関や法務局など提出先によって求められる書類が異なることもあります。

そのため、相続開始後は早い段階で必要書類を確認し、計画的に手続を進めることが円滑な相続につながります。

🏢 公的情報

海外在住の相続人がいる場合の相続手続では、在外公館が発行する署名証明や在留証明が必要となる場合があります。

制度の詳細や申請方法については、外務省の公式情報をご確認ください。

※必要となる証明書は、提出先や手続内容によって異なる場合があります。

 まとめ

海外に住んでいる相続人がいても、日本国内で相続手続を行うことは可能です。

もっとも、署名証明や住所証明など、日本国内の相続にはない手続が必要となる場合があります。

また、海外との郵送には時間を要するため、余裕をもって準備を進めることが大切です。

海外在住の相続人がいる相続では、必要書類や手続の流れを事前に確認し、計画的に進めることで、手続を円滑に進めることができます。

相続手続でお困りの方はお気軽にご相談ください

海外在住の相続人がいる場合の相続手続は、必要書類や手続の進め方など、日本国内だけで行う相続とは異なる点が少なくありません。

当事務所では、戸籍の収集、相続人調査、遺産分割協議書の作成支援など、相続手続全般についてご相談を承っております。

「海外に住む相続人がいて手続の進め方が分からない」「どのような書類が必要になるのか知りたい」など、お困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。