売上がほとんどない会社でも「経営・管理」ビザは更新できるのか|事業実態・継続性・改善計画の審査ポイントを徹底解説
はじめに
「会社を設立したものの、まだ売上がほとんどありません。このような状況でも『経営・管理』ビザは更新できますか。」
このような相談は、「経営・管理」の在留資格に関する実務の中でも少なくありません。特に、
- 創業したばかりで営業活動を始めたばかり
- 商品開発に時間がかかっている
- 店舗のオープン準備中
- 取引先との契約交渉が続いている
といった場合には、売上が少ない、あるいは一時的に売上がないこともあります。一方で、「売上が少ない=更新できない」と誤解されることもあります。しかし、出入国在留管理庁の審査では、売上高という一つの数字だけで許可・不許可が決まるわけではありません。重要なのは、事業が実際に行われており、今後も継続して経営される見込みがあることを、客観的な資料によって説明できるかどうかです。
本コラムでは、売上がほとんどない会社の更新審査で重視されるポイントについて、実務上の視点から詳しく解説します。
📖 この記事でわかること
売上が少ない会社でも更新できるのか
売上が少ないことだけで更新できないわけではない
「経営・管理」の在留資格では、売上高の最低基準は法令上定められていません。例えば、
- 年商1,000万円以上でなければならない
- 毎月一定額以上の売上が必要
- 初年度から黒字でなければならない
といった要件はありません。したがって、売上が少ないことだけを理由として更新が認められない制度ではありません。もっとも、売上が少ない場合には、その理由や事業の実態について、通常より丁寧な説明が求められることがあります。
重要なのは「事業実態」と「事業継続性」
更新審査では、「売上が少ない」という結果だけでなく、その背景にある事業活動の状況が確認されます。例えば、
- 実際に営業活動を行っているか
- 顧客との商談を進めているか
- 商品やサービスを提供しているか
- 今後の受注見込みがあるか
などです。つまり、「現在の売上」だけではなく、「今後も事業を継続できる見込み」が重要な判断要素となります。
創業間もない会社は事情が異なる
設立直後の会社では、売上がまだ少ないことは珍しくありません。例えば、
- 飲食店の開業準備
- ITシステムの開発
- 輸入商品の認証取得
- 新規取引先の開拓
など、売上が計上されるまでに一定の期間を要する業種もあります。このような場合には、事業計画や営業活動の状況を具体的に説明することが重要になります。
売上ゼロと売上が少ない会社は同じではない
「売上が少ない会社」と「売上が全くない会社」は、審査上も同じように評価されるとは限りません。例えば、年間売上が数百万円であっても、
- 契約が継続している
- 顧客が存在する
- 営業活動を行っている
のであれば、事業実態を裏付ける事情の一つとなります。一方、長期間にわたり売上がなく、営業活動の実績も確認できない場合には、事業の継続性についてより慎重に確認される可能性があります。
入管は売上だけで判断するのか
売上高は判断材料の一つにすぎない
更新審査では、売上高も確認されますが、それだけで許可・不許可が決まるわけではありません。入管では、事業全体の状況を総合的に判断します。例えば、
- 事業内容
- 売上の推移
- 利益の状況
- 資金繰り
- 今後の事業計画
などを総合的に見て、事業が安定的に継続できるかどうかを判断します。
決算書全体から事業の状況を確認する
売上高だけでは、会社の経営状況を正確に把握することはできません。例えば、
- 設備投資を積極的に行っている
- 開業費が多く発生している
- 商品開発に先行投資している
といった事情があれば、一時的に売上や利益が少なくなることもあります。そのため、入管では貸借対照表や損益計算書などを含め、決算書全体から事業の状況を確認することになります。
売上以外に確認される主な資料
更新申請では、売上以外にも次のような資料が重要になります。
| 資料 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 決算書 | 会社全体の経営状況 |
| 法人税申告書 | 事業実績・税務処理 |
| 登記事項証明書 | 会社の基本情報 |
| 事務所の賃貸借契約書 | 事業所の実態 |
| 営業許可証 | 必要な許認可の有無 |
| 会社案内・ホームページ | 営業活動の状況 |
| 事業計画書 | 今後の事業継続性 |
これらの資料を総合的に検討することにより、会社が実際に事業を営んでいるかどうかが判断されます。
売上が少ない会社で特に確認されるポイント
売上が少ない会社の更新審査では、「売上が少ない」という結果だけではなく、その会社が実際に事業活動を継続しているかが重要な確認事項となります。そのため、営業活動や事業の実態を裏付ける資料を整理しておくことが重要です。
営業活動を継続しているか
売上が少なくても、継続的に営業活動を行っていることが確認できれば、事業実態を示す一事情となります。例えば、
- 新規顧客への営業訪問
- 商談の実施
- 見積書の作成
- 展示会への出展
- 業界団体への参加
- 商品説明会の開催
などが考えられます。営業活動の状況は、商談記録、見積書、受発注に関するメールなどによって説明できる場合があります。
契約や受注の見込みがあるか
売上は、契約締結から一定期間後に計上されることもあります。例えば、
- 長期間のシステム開発
- 建設工事
- 輸入商品の販売
- 医療機器の販売
などでは、契約は成立していても、売上計上まで時間を要する場合があります。このような場合には、
- 契約書
- 発注書
- 注文書
- 基本合意書
などにより、今後の受注見込みを説明できることが重要です。
銀行口座の入出金状況は営業実態を補足する資料となる場合がある
売上が少ない会社では、営業活動をどのような資料で説明するかが重要になります。その一つとして、会社名義の銀行口座の入出金状況が営業実態を補足する資料となる場合があります。例えば、
- 売上代金の入金
- 仕入代金の支払い
- 事務所家賃の支払い
- 通信費や水道光熱費の支払い
- 税金や社会保険料の納付
- 従業員への給与支払い
など、事業活動に伴う継続的な資金の動きが確認できれば、会社が実際に事業を営んでいることを裏付ける事情の一つとなります。もっとも、銀行口座の入出金明細は、「経営・管理」の更新申請における一般的な提出書類として定められているものではありません。そのため、通常は提出を求められるものではありませんが、売上が少ない理由や営業実態について補足説明が必要な場合には、申請取次行政書士が事情を説明する文書と併せて、自主的に提出することが有効となるケースがあります。
事務所の実態があるか
売上が少ない会社では、事務所が実際に事業活動に利用されているかも重要な確認事項です。例えば、
- 専用の事務所として利用しているか
- 必要な設備が整っているか
- 日常的に使用されているか
などが確認されることがあります。賃貸借契約書だけではなく、事務所内の写真や設備の状況を整理しておくことも有用な場合があります。
ホームページや会社案内を整備しているか
近年では、多くの会社がホームページを活用して営業活動を行っています。ホームページがあること自体は在留資格の要件ではありません。しかし、
- 会社概要
- 事業内容
- 商品・サービス
- お問い合わせ先
などが整備されていれば、事業実態を説明する資料の一つとして活用できる場合があります。また、長期間更新されていないホームページや、実際の事業内容と一致しない記載がある場合には、早めに見直しておくことが望まれます。
法令を遵守した経営を行っているか
売上が少ない場合であっても、会社としての法令遵守は重要です。例えば、
| 確認事項 | 確認内容 |
|---|---|
| 法人税・消費税 | 適正に申告・納付しているか |
| 社会保険 | 加入義務を適切に履行しているか |
| 労働保険 | 加入・納付状況に問題はないか |
| 営業許可 | 必要な許認可を維持しているか |
事業規模が小さいことと、法令を遵守しなくてよいことは全く別の問題です。売上が少ない会社ほど、基本的な法令遵守が重要になります。
改善計画を説明できるか
現在の売上だけではなく、今後どのように事業を改善していくのかも重要です。例えば、
- 新商品の販売開始
- 新たな取引先との契約
- インターネット販売の開始
- 海外市場への展開
- 広告宣伝の強化
など、具体的な計画を説明できれば、事業継続性を判断する参考資料となります。抽象的な説明ではなく、契約予定や販売計画など、客観的な資料を併せて提出できるとより説得力が増します。
【事例①】設立2年目のIT会社で更新が認められたケース
※以下は説明のために内容を簡略化した架空の事例です。
外国人経営者が設立したIT会社では、設立2年目の売上は約250万円でした。売上だけを見ると決して多いとはいえませんが、
- システム開発契約を複数締結していた
- 翌年度の契約も既に受注していた
- 事務所を継続して使用していた
- ホームページを通じて営業活動を継続していた
- 税務・社会保険の手続も適正に行われていた
ことから、事業継続性を説明する資料を十分に準備して更新申請を行いました。このようなケースでは、「売上額」だけではなく、会社が継続して営業活動を行っていることが重要な判断材料となります。
【事例②】売上がなく更新が難しいと考えられるケース
※以下は説明のために内容を簡略化した架空の事例です。
会社設立後2年以上経過していましたが、
- 売上が全くない
- 営業活動の記録がない
- 事務所は実質的に使用されていない
- ホームページも更新されていない
- 今後の事業計画も具体性を欠いていた
という状況でした。このような場合には、事業の継続性や実体について慎重な確認が行われる可能性があります。売上がないこと自体ではなく、「事業活動を継続していることを客観的に説明できるか」が重要であることを示す一例といえます。
更新が認められやすいケースと注意が必要なケース
売上が少ない会社であっても、更新が認められるかどうかは売上額そのものではなく、事業実態や継続性を総合的に判断して決定されます。出入国在留管理庁も、更新審査では事業の継続性を中心に判断し、単年度の決算状況のみで結論を出すものではないとしています。実務上は、次のような違いが重要になります。
| 更新が認められやすい事情 | 注意が必要な事情 |
|---|---|
| 営業活動を継続している | 営業活動の実績が確認できない |
| 継続的な商談・受注見込みがある | 受注予定や契約予定が全くない |
| 専用事務所を実際に使用している | 事務所の実態が乏しい |
| ホームページ等で営業を継続している | 長期間更新されていない |
| 税金・社会保険を適正に納付している | 未納や届出漏れがある |
| 改善計画を具体的に説明できる | 改善策が抽象的である |
このように、「売上が少ない」という結果よりも、その背景にある事業活動の内容が重要になります。
売上が少なくても更新が期待できるケース
例えば、次のような事情がある場合には、事業継続性を裏付ける事情として評価される可能性があります。
- 創業間もなく、営業基盤の構築段階にある
- 長期契約型の業種で、売上計上まで時間を要する
- 翌期の受注契約が既に締結されている
- 新商品の販売開始が予定されている
- 継続的に営業活動を実施している
このような場合には、契約書や事業計画書などの客観的資料を提出することにより、今後の事業継続性を説明できる場合があります。
更新申請で慎重な判断となる可能性があるケース
一方で、次のような状況では、事業の継続性についてより慎重な確認が行われることがあります。
- 長期間売上が全くない
- 営業活動の実績を説明できない
- 会社の銀行口座にほとんど動きがない
- 事務所を実際には使用していない
- 今後の事業計画が具体的でない
もちろん、これらの事情が一つあるだけで直ちに更新が認められないというものではありません。しかし、売上が少ない場合には、事業実態を補完する資料をより丁寧に準備することが重要になります。
新興企業には柔軟な判断が行われる場合がある
出入国在留管理庁のガイドラインでは、**設立5年以内の国内非上場企業(新興企業)**については、独自性のある技術やサービス、新しいビジネスモデルなどにより、設立当初は赤字や売上の伸び悩みが生じることも想定しています。そのため、
- 第三者による事業評価
- 投融資や補助金の状況
- 製品・サービスの開発状況
- 顧客基盤の拡大状況
などの資料を踏まえ、事業継続性について柔軟に判断することがあると示されています。
売上が少ない会社の更新申請チェックリスト
更新申請前には、次の事項を確認しておくことをお勧めします。
| 確認項目 | チェック |
|---|---|
| 営業活動の記録を整理している | □ |
| 見積書・契約書・発注書を保管している | □ |
| 事業計画書を作成している | □ |
| 事務所を実際に使用している | □ |
| 会社のホームページを更新している | □ |
| 決算書・法人税申告書を準備している | □ |
| 法人税・消費税を適正に申告・納付している | □ |
| 社会保険・労働保険の加入状況を確認している | □ |
| 営業許可等が有効であることを確認している | □ |
| 銀行口座の入出金状況を整理している | □ |
| 翌期の受注見込みを説明できる資料を準備している | □ |
| 商品・サービスのパンフレット等を準備している | □ |
| 会社案内や名刺を最新の内容に更新している | □ |
| 改善計画を具体的に説明できる | □ |
これらを事前に整理しておくことで、追加資料の提出を求められた場合にも対応しやすくなります。
まとめ
「売上がほとんどない会社では『経営・管理』ビザは更新できない」と考えられがちですが、そのような一律の基準は法令やガイドラインにはありません。更新審査では、
- 売上額
- 営業活動
- 事業の継続性
- 財務状況
- 法令遵守
- 今後の事業計画
などを総合的に判断して、今後も「経営・管理」の在留活動を継続できるかが審査されます。特に売上が少ない会社では、「なぜ売上が少ないのか」を説明するだけでなく、「今後どのように事業を発展させていくのか」を客観的な資料とともに示すことが重要です。更新申請では、決算書だけではなく、
- 営業活動の記録
- 契約書
- 事業計画書
- 会社案内
- ホームページ
- 受注予定を示す資料
なども活用しながら、事業実態と継続性を丁寧に説明することが、円滑な審査につながります。
公的情報
※制度改正等により内容が変更される場合があります。
最新情報は出入国在留管理庁の公表内容をご確認ください。


