「経営・管理」ビザで不許可になりやすい事例20選|2025年改正後の審査ポイントと改善策を徹底解説
はじめに
「会社を設立して資本金も用意したのに、『経営・管理』ビザが許可されなかった。」「事業計画書を提出したのに、不許可になった理由が分からない。」このような相談は、「経営・管理」の在留資格に関する実務の中でも少なくありません。特に、令和7年(2025年)の制度改正により、新たに「経営・管理」の在留資格を取得する場合には、審査基準が大きく見直されました。具体的には、
- 新規申請では、原則として資本金3,000万円以上などの新たな事業規模要件(経過措置の対象となる場合を除く。)
- 中小企業診断士、公認会計士又は税理士などの外部専門家による事業計画書の評価制度
- 事業の継続性や実現可能性をより重視した審査
などが導入されています。一方で、在留期間更新許可申請では、これらの新規申請とは異なる審査項目もあり、「新規申請」と「更新申請」を区別して理解することが重要です。本コラムでは、令和7年改正後の制度を踏まえ、「経営・管理」ビザで不許可となりやすい代表的な20の事例を紹介するとともに、その原因や改善策について実務の視点から解説します。
📖 この記事でわかること
- 「経営・管理」ビザで不許可になりやすい理由
- 事業計画・資金計画に関する不許可事例
- 会社運営・事業実態に関する不許可事例
- 法令遵守・更新時に関する不許可事例
- 不許可を防ぐためのチェックリスト
- まとめ
「経営・管理」ビザで不許可になりやすい理由
令和7年改正により新規申請の審査は大きく変わった
令和7年(2025年)の制度改正では、新規に「経営・管理」の在留資格を取得する場合の審査が大きく見直されました。例えば、新規申請では、原則として資本金3,000万円以上などの新たな事業規模要件が導入されるとともに、事業計画書について外部専門家による評価・確認が求められることとなりました。一方で、既に「経営・管理」の在留資格を有している方の更新申請については、一定の経過措置が設けられており、新規申請と同一の基準が直ちに適用されるわけではありません。したがって、「新規申請」と「更新申請」では、確認すべきポイントが異なることを理解しておく必要があります。
入管は形式ではなく事業の実現可能性を重視している
「資本金を準備した」「会社を設立した」「事務所を借りた」これらはもちろん重要です。しかし、それだけで許可される制度ではありません。入管が確認しているのは、
- 本当に事業を始められるのか
- 継続して経営できるのか
- 安定した収益が見込めるのか
- 日本で適正に事業を運営できるのか
という点です。そのため、形式的に要件を満たしていても、事業の実現可能性について十分に説明できなければ、慎重な審査が行われることがあります。
更新申請でも「実態」が重視される
更新申請では、新規申請のように事業計画書の専門家評価が一律に求められるわけではありません。しかし、
- 実際に営業活動を行っているか
- 売上がどのように推移しているか
- 税金や社会保険を適正に納付しているか
- 今後も事業を継続できる見込みがあるか
などについて、総合的な審査が行われます。したがって、「更新だから簡単」ということではなく、事業実態を客観的な資料で説明できることが重要になります。
不許可事例を知ることが最も効果的な対策となる
「経営・管理」ビザでは、不許可となった理由は案件ごとに異なります。しかし、多くの案件には共通する問題点があります。例えば、
- 事業計画が具体的でない
- 資金計画に根拠がない
- 営業実態を説明できない
- 法令遵守に問題がある
などです。これらを事前に理解しておけば、申請前に改善することができます。本コラムでは、こうした実務上よく見られる20の事例を、改善策とともに解説していきます。
事業計画・資金計画に関する不許可事例
令和7年改正後の新規申請では、事業計画や資金計画の重要性がこれまで以上に高まっています。ここでは、特に問題となりやすい事例を紹介します。
① 資本金などの事業規模要件を満たしていない
令和7年改正後の新規申請では、原則として資本金3,000万円以上などの新たな事業規模要件が導入されました(経過措置が適用される場合を除きます)。そのため、改正後の制度を理解しないまま、旧制度を前提に申請準備を進めると、大きな問題となる可能性があります。
改善のポイント
申請が新規申請なのか、更新申請なのか、また経過措置の対象となるかを確認したうえで、適用される制度に沿って準備を進めることが重要です。
② 事業計画書が抽象的で実現可能性を説明できない
令和7年改正では、事業計画書の重要性が大きく高まりました。「売上を増やしたい」「事業を拡大したい」といった抽象的な記載だけでは十分ではありません。例えば、
- 市場分析
- 競合分析
- 販売戦略
- 売上予測の根拠
などを具体的に説明する必要があります。
改善のポイント
事業計画書は、「希望」を書くものではなく、「実現可能性」を説明する資料として作成することが重要です。
③ 外部専門家による事業計画の評価を受けていない
令和7年改正では、新規申請において、事業計画書について外部専門家の評価・確認が求められる制度が導入されました。この評価制度は、事業計画の客観性や実現可能性を確認することを目的としています。
会社運営・事業実態に関する不許可事例
「経営・管理」の在留資格では、会社が存在することだけでは十分ではありません。入管が重視しているのは、
- 実際に事業が行われているか
- 外国人本人が経営者として活動しているか
- 今後も事業を継続できる見込みがあるか
という点です。ここでは、会社運営や事業実態に関して問題となりやすい事例を紹介します。
④ バーチャルオフィスのみを事務所としている
バーチャルオフィスは、法人設立や郵便物の受領には利用できる場合があります。しかし、実際に事業を行う場所としての実態がない場合には、「経営・管理」の在留資格に必要な事務所として認められない可能性があります。例えば、
- 郵便受取だけの住所
- 会議室を予約したときだけ利用できる
- 常時使用できる執務スペースがない
といった場合には、事業所の実態について慎重に確認されることがあります。
改善のポイント
事務所は、継続的・独立的に事業活動を行う場所として使用できる状態であることが重要です。
⑤ 事務所の実態を説明できない
事務所を賃借していても、実際には事業に利用されていない場合があります。例えば、
- 家具や備品がほとんどない
- 看板が設置されていない
- パソコンや通信環境が整っていない
- 実際には別の場所で業務を行っている
などです。
改善のポイント
賃貸借契約書だけではなく、
- 事務所内部の写真
- 設備の状況
- 看板
- OA機器
なども整理しておくと、事業実態の説明に役立つ場合があります。
⑥ 外国人本人が名義だけの代表者になっている
登記事項証明書に代表取締役として記載されているだけでは十分ではありません。例えば、
- 実際の経営判断は他人が行っている
- 外国人本人は会社にほとんど来ていない
- 契約締結や銀行取引に関与していない
といった状況では、「経営又は管理」の活動を行っているとは評価されにくくなる可能性があります。
改善のポイント
代表者として、
- 取引先との交渉
- 従業員の管理
- 資金管理
- 経営判断
などを実際に行っていることを、客観的な資料で説明できるようにしておくことが重要です。
⑦ 営業活動を行っていることを説明できない
会社を設立しただけでは事業実態を示すことはできません。例えば、
- 商談記録がない
- 見積書を作成していない
- 契約交渉の記録がない
- ホームページも開設されていない
などの場合には、実際に営業活動を行っているかについて確認されることがあります。
改善のポイント
営業活動については、
- 見積書
- 提案書
- 商談記録
- メールのやり取り
- 展示会への出展資料
などを整理しておくことが望まれます。
⑧ 売上が極端に少ない理由を説明できない
売上が少ないこと自体で不許可になるわけではありません。しかし、
- なぜ売上が少ないのか
- 今後どのように改善するのか
を説明できなければ、事業継続性について慎重な判断が行われる可能性があります。例えば、
- 開業準備中
- 商品開発中
- 長期契約型事業
など合理的な事情がある場合には、その事情を客観的な資料によって説明することが重要です。
改善のポイント
事業計画書や受注予定資料などを用いて、売上改善の見通しを具体的に説明することが望まれます。
⑨ 契約書や請求書など営業実態を示す資料が不足している
営業活動を行っていても、それを裏付ける資料がなければ説明は困難になります。例えば、
- 契約書
- 発注書
- 請求書
- 納品書
- 領収書
などは、営業実態を説明する資料となり得ます。また、売上がまだ計上されていない場合であっても、契約締結や受注予定を示す資料があれば、今後の事業継続性を説明する資料として活用できる場合があります。
⑩ 営業実態を補足する資料を十分に活用していない
売上が少ない会社では、営業実態をどのような資料で補足するかが重要になります。例えば、
- 会社名義口座の入出金状況
- 事務所家賃や通信費の支払記録
- 商品仕入れの支払記録
- 税金や社会保険料の納付状況
などは、会社が継続して事業活動を行っていることを補足的に説明する資料となる場合があります。もっとも、これらは一般的な提出書類として一律に求められているものではありません。しかし、営業実態や事業継続性について補足説明が必要な場合には、申請理由書などと併せて自主的に提出することが有効となるケースがあります。
実務上のポイント
売上高だけでは会社の営業実態を十分に把握できないことがあります。例えば、設立間もない会社や長期契約型の事業では、売上計上まで一定期間を要することがあります。このような場合には、契約書、見積書、受発注資料、事業計画書に加え、会社名義口座の資金の流れを示す資料を補足的に提出することで、営業実態や事業継続性について理解を得られる場合があります。
【架空事例】営業実態を丁寧に説明して許可につながったケース
※以下は説明のために内容を簡略化した架空の事例です。
外国人経営者が設立した輸出入会社は、設立後1年が経過した時点で売上は約180万円にとどまっていました。しかし、
- 複数の継続取引先との契約書
- 仕入先との発注書
- 会社名義口座の継続的な入出金記録
- 事務所の写真
- 翌年度の受注予定資料
- 具体的な営業計画
などを提出し、営業実態と今後の事業継続性を具体的に説明しました。このようなケースでは、売上額だけではなく、事業活動全体を総合的に評価することが重要となります。
法令遵守・更新時に関する不許可事例
事業計画や事業実態が十分であっても、日本で事業を営む事業者として法令を遵守していなければ、「経営・管理」の在留資格における事業の適正性や継続性について慎重な判断が行われることがあります。ここでは、更新申請でも特に注意したい事例を紹介します。
⑪ 法人税や消費税などを適正に申告・納付していない
会社には、
- 法人税
- 消費税
- 法人住民税
- 法人事業税
などの申告・納付義務があります。未納や長期間の滞納がある場合には、事業者としての法令遵守の状況について慎重に確認される可能性があります。
改善のポイント
やむを得ない事情で納付が遅れた場合には、その経緯を説明するとともに、納付済みであることを証明する資料を整理しておくことが重要です。
⑫ 社会保険や労働保険の加入義務を履行していない
社会保険の適用事業所であるにもかかわらず加入手続を行っていない場合や、保険料の未納がある場合も注意が必要です。更新申請では、法令を遵守した会社運営が行われているかという観点から確認されることがあります。
改善のポイント
健康保険・厚生年金保険・労働保険について、加入状況や納付状況を確認し、必要書類を整理しておくことが望まれます。
⑬ 在留資格で認められた活動以外を行っている
「経営・管理」の在留資格では、自ら事業の経営又は管理を行うことが予定されています。そのため、
- 実際には現場作業だけを行っている
- フルタイムの別の仕事に従事している
- 経営者としての活動実態が認められない
といった場合には、在留資格に該当する活動を行っているかが問題となる可能性があります。
改善のポイント
経営者としての業務内容を整理し、経営判断や事業管理を行っていることを客観的に説明できるようにしておくことが重要です。
⑭ 更新時に事業内容が大きく変わっている
事業内容を変更すること自体は禁止されているわけではありません。しかし、
- 飲食業からIT事業へ
- 貿易業から不動産業へ
など、大きく業種を変更した場合には、新たな事業についても実現可能性や継続性が確認されます。
改善のポイント
事業内容を変更した理由、新たな事業計画、市場分析、必要な許認可などについて説明できるようにしておくことが重要です。
⑮ 入管への説明が十分でない
必要書類は提出していても、
- なぜ売上が少ないのか
- なぜ赤字なのか
- なぜ代表者が交代したのか
などについて説明がない場合には、審査担当者が事情を理解できないことがあります。
改善のポイント
事情を説明する文書(理由書・説明書)を添付し、客観的資料とあわせて一貫性のある説明を行うことが重要です。
⑯ 虚偽の説明や資料を提出する
売上を実際より多く見せたり、実態と異なる契約書を提出したりすることは、在留資格審査に重大な影響を及ぼします。虚偽資料の提出は、その案件だけでなく、その後の在留資格申請にも影響する可能性があります。
改善のポイント
提出資料は、事実に基づき正確に作成することが最も重要です。不利な事情がある場合でも、隠すのではなく、その理由や改善状況を誠実に説明することが望まれます。
⑰ 制度改正後の新規申請要件を誤解している
令和7年(2025年)の制度改正後も、「資本金500万円で新規申請できる」といった旧制度の情報がインターネット上に残っています。しかし、新規申請では資本金3,000万円以上などの新たな事業規模要件が導入されており、経過措置の有無も含め、適用される制度を正確に確認することが必要です。
改善のポイント
最新の法令・ガイドラインを確認し、自身の申請に適用される要件を整理した上で準備を進めましょう。
⑱ 外部専門家による事業計画書の評価制度を理解していない
令和7年改正では、新規申請について、中小企業診断士、公認会計士又は税理士などの外部専門家による事業計画書の評価制度が導入されています。この制度の対象となるにもかかわらず、必要な準備を行わずに申請すると、審査に影響を及ぼす可能性があります。
改善のポイント
制度の対象となる場合には、事業計画書の内容を十分に検討し、客観的な評価を受けたうえで申請することが重要です。
⑲ 経過措置の適用を誤って理解している
制度改正には経過措置が設けられています。そのため、
- 新規申請なのか
- 更新申請なのか
- 経過措置の対象なのか
を誤って理解したまま申請準備を進めると、思わぬ不備につながる可能性があります。
改善のポイント
申請時期や現在の在留資格を踏まえ、自身に適用される制度を事前に確認することが重要です。
⑳ 不許可後の改善を行わず再申請する
一度不許可になったからといって、再申請ができなくなるわけではありません。しかし、前回と同じ資料を提出するだけでは、結果が変わらない可能性があります。
改善のポイント
不許可となった理由を分析し、
- 事業計画
- 資金計画
- 事業実態
- 法令遵守
などについて改善したことを客観的な資料で説明することが重要です。
不許可を防ぐためのチェックリスト
申請前には、次の事項を確認しておくことをお勧めします。
| 確認項目 | チェック |
|---|---|
| 最新の制度改正内容を確認している | □ |
| 新規申請・更新申請の区別を理解している | □ |
| 経過措置の対象か確認している | □ |
| 事業計画書に具体的な根拠がある | □ |
| 必要に応じて外部専門家の評価を受けている | □ |
| 事業規模要件を満たしている | □ |
| 事務所の実態を説明できる | □ |
| 営業活動を示す資料を整理している | □ |
| 契約書・請求書などを保管している | □ |
| 会社名義口座の資金の流れを説明できる | □ |
| 税金・社会保険を適正に納付している | □ |
| 経営者としての活動実態を説明できる | □ |
| 事業内容の変更理由を説明できる | □ |
| 提出資料に矛盾がない | □ |
| 理由書・説明書を必要に応じて作成している | □ |
まとめ
「経営・管理」ビザの審査では、特定の一つの要件だけで許可・不許可が決まるものではありません。令和7年(2025年)の制度改正により、新規申請では資本金などの事業規模要件や外部専門家による事業計画書の評価制度が導入され、事業の実現可能性がこれまで以上に重視されるようになりました。一方、更新申請では、実際の営業活動、事業継続性、法令遵守など、経営実態を示す資料が重要になります。不許可を防ぐためには、
- 最新制度を正しく理解すること
- 客観的な資料を十分に準備すること
- 必要に応じて理由書や補足説明を添付すること
が重要です。また、万一不許可となった場合でも、前回の問題点を分析し改善した上で再申請することは可能です。重要なのは、同じ内容を繰り返すのではなく、不許可理由に対応した改善を客観的に示すことです。


