永住許可ガイドライン改定案を徹底解説|年収・年金・日本語B1・2027年4月から何が変わる?

2026年8月4日、出入国在留管理庁は「永住許可に関するガイドライン(案)」を公表し、パブリック・コメント(意見公募)を開始しました。

今回の改定案では、永住許可の審査における収入、将来の年金受給見込額、公租公課、日本語能力、日本の制度・ルールへの理解、子どもの就学、長期出国などについて、これまで以上に具体的な考え方が示されています。

一方、今回公表されたものは、まだ**「改定案」**です。パブリック・コメントを経て内容が変更される可能性があります。

なお、e-Gov上の意見募集の受付締切は、受付締切日時 2026年9月4日0時0分です。

⚠ 本記事は2026年8月18日時点で公表されている「永住許可に関するガイドライン(案)」を基にした解説です。正式な制度内容については、今後公表される最終版をご確認ください。

この記事のポイント

・永住許可ガイドライン改定案の概要

・世帯年収と年金に関する新しい考え方

・日本語能力や出国日数の新しい審査基準

・2027年4月1日以降の適用時期

・申請中の案件に影響する可能性がある項目

1.なぜ「永住許可に関するガイドライン」が改定されるのか

出入国在留管理庁は今回の改定について、「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を踏まえ、在留資格「永住者」の位置付けを明らかにするとともに、永住許可の審査で考慮すべき事項について基本的な考え方を示すためのものと説明しています。

改定案では、「永住者」は在留活動と在留期間の制限がない最も安定した法的地位であり、その後の生涯を日本に生活の本拠を置いて過ごすことが想定されることから、永住許可について「特に慎重な審査を行う必要がある」としています。

さらに、永住許可の判断では、申請者本人の在留歴だけでなく、日本語能力、日本社会への適応状況、家族単位での生活基盤なども総合的に考慮する方向が明確になっています。

「国益」の考え方も明確化

今回の改定案で特に注目すべきなのが、国益要件の考え方です。改定案では、単に、「日本国の利益に反しない」という消極的な状態だけではなく、積極的かつ具体的に、その外国人の永住が日本国に利益をもたらす必要があるという考え方が示されています。
ただし、これは一つの項目を満たさなければ直ちに不許可になるという意味ではありません。
改定案においても、個々の事情を総合的に考慮して永住許可の可否を判断するという基本的な考え方は維持されています。

 2.永住許可の3つの基本要件は変わらない

永住許可の法律上の基本的な枠組みは変わりません。
入管法第22条第2項を基礎として、次の3つが中心となります。

要件内容
素行善良要件法律を遵守し、住民として社会的に非難されることのない生活をしていること
独立生計要件独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有していること
国益要件その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

なお、日本人、永住者又は特別永住者の配偶者又は子については、法律上、素行善良要件と独立生計要件への適合は求められません。
ただし、国益要件まで免除されるわけではありません。

3.【重要】独立生計要件が大きく具体化される

今回の改定案で最も大きな影響が予想されるのが、独立生計要件です。
改定案では、申請者について、

  • これまでの在留状況
  • 現在の収入
  • 将来見込まれる収入
  • 資産
  • 技能

などから、現在だけではなく将来にわたって安定した生活ができるかを確認するとしています。そして、「日本人と同等水準以上の経済条件が求められる」という考え方が明記されています。また、この審査は原則として同一生計世帯単位で行われます。

4.収入|「日本人世帯の平均収入を上回る水準」が目安に

改定案では、申請時点における申請者の属する世帯年収について、「世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準」に継続して達しているかを考慮するとしています。

単純な「年収○万円以上」ではない

ここは非常に重要です。今回の改定案では、「永住申請には年収500万円が必要」「年収600万円あれば安全」といった全国一律の金額は示されていません。基準となるのは世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入です。したがって、

  • 単身世帯
  • 夫婦2人世帯
  • 夫婦と子ども1人の3人世帯
  • 夫婦と子ども2人の4人世帯

では、必要とされる年収水準が異なることになります。現時点では、具体的な金額そのものは改定案には記載されていません。そのため、「新しい永住許可の年収基準は○○万円である」と断定することはできません。

5.世帯年収には誰の収入を入れられるのか

原則として、申請者本人の収入に加え、住居と家計を共にする同一生計世帯の構成員の収入を合算します。例えば、夫婦がともに正社員として働いている場合には、原則として双方の収入を考慮する仕組みです。

 「家族滞在」の資格外活動収入などは原則合算しない

注意しなければならない例外があります。「家族滞在」のように就労を目的としない在留資格の者が、資格外活動許可によって得ているアルバイト収入等については、世帯年収に合算することは適当ではないとされています。つまり、家族全員の収入を単純に合計すればよいわけではありません。

6.海外に住んでいる扶養親族も世帯人数に加算される

もう一つ重要なのが、扶養親族の取扱いです。申請者が扶養している親族がいる場合、その親族が外国に住んでいて同居していなくても、原則として世帯人数に加算するとされています。例えば、母国に住む両親を継続的に扶養している場合、その親族の収入は世帯収入には加算されない一方で、必要な年収水準を判断する際の世帯人数には含まれる可能性があります。また、世帯人数が多くなるほど、生活費等を踏まえて必要な年収水準も高くなる考え方が示されています。扶養家族が多い申請者にとっては、非常に重要な変更点です。

7.【最重要】将来の年金受給見込額も審査対象になる

今回の改定案で、収入と並んで大きな注目を集めているのが年金です。これまでの永住許可審査でも、

  • 年金に適切に加入しているか
  • 保険料を納期限内に支払っているか

は重要な審査項目でした。今回の改定案では、それに加えて、「将来、実際にどの程度の年金を受給できる見込みなのか」まで考慮する考え方が示されました。

 8.「厚生年金に30年間加入した場合の年金水準」とは?

この部分は非常に誤解されやすいため、整理して説明します。申請者について、

  • 現在の年齢
  • 年金加入期間
  • 過去の働き方
  • 加入期間中の平均年収
  • 現在の年収

などから、将来受給できる年金の見込額を推計します。そのうえで、比較対象として、日本人世帯の平均収入を上回る年収水準で30年間働き、その期間、厚生年金に加入していた場合に将来受給可能な年金の見込額を算定します。改定案では、この比較基準を「受給年金水準」としています。

「厚生年金30年加入」が申請条件になるわけではない

ここは特に注意が必要です。今回の改定案は、「厚生年金に30年間加入していなければ永住許可を受けられない」という意味ではありません。30年間という期間は、あくまで比較基準となるモデル年金額を算定するための期間です。例えば、厚生年金の実際の加入期間が20年であったとしても、それだけで直ちに不許可になるわけではありません。審査対象となるのは、最終的に見込まれる年金額や金融資産などを含めた、将来の生活安定性です。

9.年金が不足しても金融資産で補える

今回の改定案では、年金受給見込額が受給年金水準に達していない場合でも、不足する部分を補うことができる金融資産を保有していれば、受給年金水準に達しているものとして評価するという考え方が示されています。これを「補填資産」としています。

年齢によって必要な補填資産額が変わる

補填資産についても、すべての年齢の申請者に同じ金額を求める仕組みではありません。若い申請者は、将来的に働いて資産形成をする期間が長く残されいます。そのため、改定案では、若い人ほど必要な補填資産の基準を低くする考え方が示されています。ただし、

  • 40歳ならいくら
  • 50歳ならいくら
  • 60歳ならいくら

といった具体的な金額は、現時点では公表されていません。

10.夫婦の場合には年金も世帯単位で見る

年金についても、原則として同一生計世帯単位で判断するとされています。配偶者がいる場合には、申請者本人と配偶者の将来の年金受給見込額を合算して評価する仕組みが示されています。さらに、比較対象となる「受給年金水準」についても、配偶者が同期間、第3号被保険者であった場合に受給できる年金見込額を加算する考え方です。したがって、今回の年金審査は、本人だけの年金加入月数を見る制度ではなく、世帯全体として老後の生活を維持できるかを見る制度と理解するのが適切です。

11.税金・年金・健康保険|「今、未納がなければよい」ではない

国益要件では、公租公課の支払状況も具体的に整理されています。対象となるのは、

  • 所得税
  • 住民税
  • 法人税
  • 固定資産税
  • 公的医療保険
  • 公的年金

などです。これらを適切に支払っていない場合には、消極的に評価するとされています。

過去の滞納処分も審査対象になる

重要なのは、申請時点で未納がなければ問題がないというわけではないことです。改定案では、現在は完納していても、過去に滞納処分を受けたことがあるなど、適切に支払っていなかった状況が認められる場合には、原則として消極的に評価するとしています。
また、公租公課についても原則として同一生計世帯単位で審査する考え方が示されています。申請者本人だけでなく、同一生計の配偶者等についても確認が必要です。

12.入管法上の届出義務違反も過去に遡って確認される

審査対象は、税金や社会保険だけではありません。改定案では、

  • 住居地の届出
  • 所属機関に関する届出
  • 在留カードに関する義務
  • 在留カードの携帯・提示義務
  • 在留資格で認められていない活動をしない義務

などについても確認するとしています。現在違反状態にある場合だけでなく、過去の義務違反が判明した場合も、原則として消極評価するとされています。そのため、永住申請前には、過去の届出状況についても確認しておくことが重要です。

13.原則10年在留+長期出国について具体的な数字が示された

原則として、引き続き10年以上日本に在留し、そのうち就労資格又は居住資格で引き続き5年以上在留していることを考慮するとされています。今回の改定案では、さらに長期出国について具体的な数字が示されました。申請時点から過去10年以内に、合理的な理由なく、

  • 1回の出国で半年以上、日本を不在にした場合
  • 出国期間が通算2年6か月以上となった場合

には、原則として消極的に評価するとされています。

半年以上の出国で自動的に不許可になるわけではない

原文では「合理的な理由なく」とされています。そのため、

  • 海外赴任
  • 会社命令による長期出張
  • 病気療養
  • 家族の看護
  • その他やむを得ない事情

がある場合には、その事情を含めて判断される余地があります。つまり、「半年以上出国したら永住許可は不可能」という機械的な基準ではありません。

14.在留期間「3年」の経過措置にも注意

現行の運用では、在留期間が「3年」の場合でも、永住許可で求められる「最長の在留期間」を有しているものとして取り扱う経過措置があります。改定案では、2027年3月31日までに行われた永住許可申請については、在留期間3年でも最長の在留期間として取り扱うとされています。

2027年4月1日以降にも一定の経過措置がある

2027年3月31日時点で在留期間「3年」を有している方については、

  • 2027年4月1日以降に行う最初の永住許可申請であること
  • その「3年」の在留期間内に一定の条件を満たして申請すること

など、改定案所定の条件を満たす場合には、引き続き最長の在留期間として扱う経過措置が設けられています。したがって、「2027年4月1日からは在留期間3年では一切申請できない」という理解は正確ではありません。

15.日本語能力|B1相当以上が考慮要素に

今回の改定案では、日本語能力も明示的な考慮要素となります。具体的には、「日本語教育の参照枠」におけるB1相当レベル以上の日本語能力を有するかを考慮するとしています。B1相当とは、日常生活や社会生活において、一定程度自立して日本語を使用できる水準です。

すべての申請者に一律B1を要求するわけではない

改定案では、一定の申請者については、日本語能力を考慮要素としない場合があることも示されています。例えば、

  • 一定の高度人材外国人
  • その家族
  • 日本の初等教育又は中等教育を累計6年以上受けた人
  • 一定の条件を満たす永住者の子

などです。したがって、「2027年4月から永住申請には全員JLPT N2が必要になる」といった理解は正確ではありません。また、B1相当をどの試験や資格で確認するのかについては、今後の正式な運用確認が必要です。

16.日本の制度・ルールへの理解も確認される

日本語能力とは別に、日本の制度や生活上のルールを理解しているかという項目も設けられます。改定案では、「生活・就労ガイドブック」に記載されている事項を中心として、指定された方法で理解度を確認するとしています。現時点では、

  • 筆記試験なのか
  • オンライン形式なのか
  • 面談なのか
  • 何点以上必要なのか

といった詳細は明らかになっていません。今後の正式な公表を確認する必要があります。

17.学齢期の子どもの就学も考慮要素に

申請者が義務教育期間にある子どもを養育している場合、その子どもが小学校又は中学校に通学していることも考慮要素とされています。申請者本人が学齢期の場合には、本人の就学状況が確認されます。これは、申請者本人だけでなく、家族全体として日本社会に生活基盤を置き、社会制度の中で安定した生活を送っているかを確認する趣旨と考えられます。

18.日本人・永住者等の配偶者の「10年在留特例」も変更

今回の改定案では、原則10年在留の特例も見直されています。特に影響が大きいのが、日本人、永住者又は特別永住者の配偶者です。

現行の取扱い

現行では、原則として、

  • 実体を伴う婚姻生活が3年以上
  • 引き続き日本に1年以上在留

していることが特例の目安とされています。

改定案

改定案では、

  • 実体を伴う婚姻生活が5年以上
  • 引き続き日本に3年以上在留

することが求められる内容となっています。実子等についても、改定案では3年以上継続して日本に在留していることが示されています。これは従来より厳しい変更です。

19.その他の「原則10年在留」の主な特例

改定案では、主として次のような特例が整理されています。

対象主な在留期間等
日本人・永住者・特別永住者の配偶者婚姻5年以上+国内在留3年以上
その実子等国内在留3年以上
定住者5年以上
難民・補完的保護対象者認定後5年以上
高度人材70点以上原則3年以上
高度人材80点以上原則1年以上
特別高度人材原則1年以上
日本への貢献が認められる者5年以上

ただし、それぞれについて細かな要件があります。単に年数だけで判断するのではなく、個別の在留歴や資格内容を確認する必要があります。

20.「特定活動」の在留期間算入についても整理された

「特定活動」は、その活動内容が多岐にわたるため、永住許可に必要な在留期間へ算入されるかが分かりにくい在留資格です。改定案では、例えば、

  • 継続就職活動
  • 就職内定後の待機
  • 大学卒業後の起業活動
  • 難民認定等手続中

など、特例的・一時的な在留については、原則10年の在留期間に算入しないと整理されています。また、「特定活動」で就労している場合でも、すべてが就労資格で5年以上」の期間に算入されるとは限りません。活動内容ごとの確認が必要です。

21.【最重要】新ガイドラインはいつから適用されるのか

改定案では、適用時期について明確な考え方が示されています。

原則は2027年4月1日以降の申請

改定後のガイドラインは、2027年4月1日以降に行われた永住許可申請から適用するとされています。ただし、重要な例外があります。

22.2027年4月1日より前の申請にも「収入」等が適用される場合がある

改定案では、次の2項目について特別な経過措置が設けられています。

  • 「収入」
  • 「公共の負担とならないこと」

これらについては、ガイドライン改定日の6か月前の日以降に申請され、かつ、改定日時点で審査中の案件にも適用するとされています。したがって、「2027年4月1日より前に申請すれば、すべて旧基準で審査される」とは限りません。

23.では「年金30年水準」も申請中の案件に適用されるのか

ここは非常に重要です。年金の新しい考え方は、「年金」という独立した項目として規定されています。一方、2027年4月1日以前の申請中案件にも適用するとされているのは、

  • 「収入」
  • 「公共の負担とならないこと」

の2項目です。したがって、2026年8月時点の改定案の文言をそのまま読む限り、「30年間厚生年金水準」という新しい年金基準は、申請中案件への特別な適用対象には含まれていません。ただし、現在はあくまで改定案です。パブリック・コメント後の最終版で変更される可能性がありますので、正式なガイドラインの確認が必要です。

24.2027年3月31日までに申請すれば必ず有利なのか

一概には言えません。確かに、

  • 在留期間「3年」の取扱い
  • 年金
  • 日本語能力B1
  • 日本の制度・ルールへの理解
  • 子どもの就学
  • 配偶者特例

などについては、改定案上、原則として2027年4月1日以降の申請から新しい取扱いが適用されます。しかし、「収入」と「公共の負担とならないこと」については、それ以前の一定の申請中案件にも新しい考え方が適用されます。したがって、「改定前に急いで申請すれば安心」とは限りません。申請時には、

  • 世帯年収
  • 扶養人数
  • 配偶者の在留資格と収入
  • 年金加入状況
  • 税金
  • 健康保険
  • 年金保険料
  • 出国歴
  • 在留期間

などを総合的に確認することが重要です。

25.今回の改定案から読み取れる永住審査の方向性

ここからは、改定案に記載された事実を前提とした推論です。今回の改定案では、従来から重視されてきた、

  • 在留年数
  • 納税
  • 社会保険料
  • 法令遵守

に加えて、

  • 世帯人数に応じた収入
  • 将来の年金受給見込額
  • 金融資産
  • 日本語能力
  • 日本の制度・ルールへの理解
  • 子どもの就学状況

などが具体的に示されました。このことから、永住審査は、「現在、日本で生活できているか」だけでなく、「永住後も長期にわたって日本社会の中で安定した生活を維持できるか」という観点を、より具体的な数字と資料によって確認する方向に進むと考えられます。また、収入、年金、公租公課などについて同一生計世帯を単位として評価することから、申請者本人だけではなく、世帯全体の生活基盤を見る審査へ比重が移ることも読み取れます。

26.現時点でまだ分からないこと

今回の改定案では、なお多くの重要事項が未確定です。例えば、

  • 世帯人数別の具体的な年収水準
  • どの統計を用いて平均収入を算定するのか
  • 「受給年金水準」の具体的な金額
  • 年金受給見込額の具体的な計算方法
  • 年齢別の補填資産額
  • B1相当をどの試験・資格で証明するのか
  • 日本の制度・ルールの理解度をどのように確認するのか
  • 各項目を総合評価するときの具体的な重み付け

などについては、現時点では確定していません。そのため、「年収○万円なら必ず許可される」「預貯金○万円あれば年金不足を補える」「厚生年金が30年未満なら不許可になる」といった断定はできません。

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